マサブク ~masaki books~

理系大学院生がおすすめのミステリ小説を中心に紹介していく雑記ブログ

「ハサミ男」 -殊能将之ー 【ハサミ男の偽物はだれ?】あらすじ&感想

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こんにちは、マサキです。

 

今回ご紹介する小説は殊能将之さんの「ハサミ男」です

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第13回メフィスト賞受賞作

叙述トリックの名作としてかなり有名な本作

ネタバレに注意しつつ紹介していきたいと思います

 

この本のオススメ度 A

 

 

 

概要

 

美少女を殺害し、研ぎあげたハサミを首に突き立てる猟奇殺人犯「ハサミ男」。

3番目の犠牲者を決め、綿密に調べ上げるが、自分の手口を真似て殺された彼女の死体を発見する羽目に陥る。

自分以外の人間に、何故彼女を殺す必要があるのか。「ハサミ男」は調査をはじめる。

精緻にして大胆な長編ミステリの傑作!

 

 

あらすじ

 

主人公は「ハサミ男」である『わたし』

 

『わたし』は幾度となく自殺未遂を繰り返していた

 

自殺に失敗するたびに『わたし』は『医師』と呼ばれる男との会話を繰り返すのだった

 

わたしが死にたがっていることは、医師がいちばんよく知っているはずだ。

自殺しそこなうたびに、彼と面談しているのだから

「また言い方を間違っているな」

医師は背筋をのばして、わたしの目を正面から見すえた。

「死にたいなら、もうとっくに死んでいるはずであるだろう。そうじゃないかね」

しかし、わたしはほんとに死にたいと思っている。死を心から願っている。

 

「ハサミ男」p.30

 

 

『わたし』は自殺に失敗するたびに若い女を殺害する

 

殺害方法は、首に必ずハサミを突き立てること

 

その異常かつ残虐な犯行からマスコミからは「ハサミ男」と呼ばれている

 

二人の若い女をたて続けに殺し、三人目の標的を定めたハサミ男は女のあとをつけていた矢先

 

自分と全く同じ手口で、標的だった女子学生、樽宮由紀子が何者かに殺されているのを目撃する

 

わたしは我に返り、この場から立ち去らなければならない、と思った。

実際に樽宮由紀子を殺したのならまだいいが、殺してもいないのに捕まるのは、あまりにも理不尽だ。

だが、もう間に合わなかった。振り返り、急いで逃げ出そうとしたとき、公園の入り口から人が近づいてくるのが見えた。

「ハサミ男」p.86

 

意図せず第一発見者になってしまった『わたし』

 

果たして真犯人は、なぜハサミ男の手口を利用したのか?

 

 

感想

医師の存在

 

『わたし』のそばに唐突に表れる医師、物語冒頭の自殺未遂のシーンで読者は

 

あれ?こいつどこから出てきた?

 

と思うはずです、登場の描写がなく、いきなり『わたし』と会話を始めるのですから

 

ただ、このシーンを読んだ時点で不思議に思いながら読み進めると

 

この医師は『わたし』が何らかの形で生み出した人格である

 

という事実に気づきます

 

序盤の伏線

そもそも二人を殺害している殺人鬼であるので、語り手である『わたし』の思考はサイコパス気味です…

 

そして『わたし』は自分のことを頭が悪いと思っているので、その裏返しとして被害者は美人であり知的な女性を選びます

 

三人目の被害者、樽宮由紀子の素性を調べるため、何度か『わたし』は尾行をするのですが、そこでちりばめられた伏線がきれいに終盤で回収されます!

 

これから読まれる方はぜひこのシーンに注意して読んでみてください!

 

 

 

 

※以下ネタバレ※

 

 

ここからは物語の核心に触れていきます

 

未読の方はブラウザバック推奨です!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ハサミ男の正体

 

「ハサミ男」このタイトルがすでにミスリードでした

序盤まで読者は

日高=ハサミ男

だと勘違いしたまま読み進めてしまい、知夏を第二発見者だと思い込んでいた

しかし実際は逆であり、終盤までその事実は伏せられていました

 

ここがこの作品の最大のポイントです!

叙述トリックとしては王道である性別誤認トリックにまんまとハマってしまいました…

 

読者が日高をハサミ男だと勘違いしてしまった要因はいくつかあり

  • マスコミの報道
  • 『わたし』が自分の肥満体系を気にしている
  • 『わたし』の口調
  • 磯部視点での告別式の描写

これらの要素が絡み合い叙述トリックが違和感なく成り立ったのだと思います

 

ラストシーン

堀之内に銃で撃たれた知夏は病院のベッドで目覚め、医師と会話をする

 

そして会話の途中で医師そっくりの男があらわれ、知夏に話しかける

 

だがその男へ、知夏ではない誰かが問いかけにこたえる

 

「ええ、パパ。わかってるわ、パパ。気にしないで、パパ。」

 

男が去ったあと、知夏が一人になる

 

隣のベッドで寝ている老婆の孫が唐突に知夏に声をかける

 

「クッキー食べませんか?」

 

とても頭のよさそうな子だった。知夏は問いかける

 

「きみ、名前はなんていうの?」

 

 

このラストシーン、様々な謎が明らかになります

 

医師と呼ばれている知夏の中の人格は父を模して造られている事

医師と知夏のほかにもう一つの人格があること

そして知夏はもう一度『ハサミ男』になるということ

 

 おそらく殊能将之さんはこのラストシーンを最初から決めていたのかなと思います

 

運よく知夏はハサミ男であるという疑惑から解放されたが、決してハサミ男をやめることはできないのかなと

 

この含みのあるラストシーン、くせになりますね!

 

まとめ

叙述トリックの名作「ハサミ男」いかがでしたか?

 

圧倒的なインパクトこそないものの、じわりじわりと明らかになっていく真相は

読んでいて続きが気になり、つい一気読みしてしまうと思います!

 

今回は 「ハサミ男」 -殊能将之ー を紹介させていただきました!

 

それではみなさまよいミステリ小説ライフを!