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理系大学院生がおすすめのミステリ小説を中心に紹介していく雑記ブログ

「ジェリーフィッシュは凍らない」 ー市川優人ー 【21世紀の『そして誰もいなくなった』】あらすじ&感想

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こんにちは、マサキです。

 

今回ご紹介する小説は市川優人さんの「ジェリーフィッシュは凍らない」です

 

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第26回鮎川哲也賞受賞作

 

21世紀の「そして誰もいなくなった」と呼ばれているこの作品

 

クローズドサークルものとして非常に完成度が高いので一読の価値アリです!

 

それではさっそくまいりましょう!

 

この本のオススメ度 A

 

 

概要

 

特殊技術で開発され、航空機の歴史を変えた小型飛行船〈ジェリーフィッシュ〉。

その発明者である、ファイファー教授たち技術開発メンバー6人は、新型ジェリーフィッシュの長距離航行性能の最終確認試験に臨んでいた。

ところがその最中に、メンバーの1人が変死。

さらに、試験機が雪山に不時着してしまう。脱出不可能という状況下、次々と犠牲者が……。

第26回鮎川哲也賞受賞作

 

 鮎川哲也賞の作品はどれも面白いので、読みたい本がどんどん増えていきますね!

 

それではあらすじ行きましょう!

 

あらすじ

 

周囲を支配するのは、薄闇と凍てつく空気。

吹雪が魔物のような咆哮を上げながら、海月<ジェリーフィッシュ>のゴンドラを揺らしていた。

 

鈍器を床に放り投げ、私は最後の仕事に取り掛かった。

残された作業はそう多くない。

 

-私自身を、この雪の牢獄から消し去るだけだ。

 

「ジェリーフィッシュは凍らない」p.13

 

 

 1983年、ファイファー教授率いる、六名の乗組員がジェリーフィッシュと呼ばれる小型飛行船の飛行実験を行っていた

 

だがこの飛行実験は、全員が死亡という形で失敗に終わる

 

事件直後、この事件を担当することになったマリアと漣は

 この事件がただの墜落事故ではないことに気づく

 

乗組員全員の死体が明らかに他殺だったためである、

 

沈黙が漂った。

プロペラの爆音が漣の鼓膜を殴りつけた。

「一体何がーー」

我知らず呟く。

「『何が』?」マリアが不敵に言い放った。

「決まってるでしょ、そんなの。

 

ーー殺し合いよ」

 

 「ジェリーフィッシュは凍らない」p.47

 

 

 ジェリーフィッシュの中で、いったい何が起こったのか?

果たして犯人は?

 

 

感想

ジェリーフィッシュ

クローズドサークルには様々な形がありますが、この作品はジェリーフィッシュと呼ばれる飛行艇を中心に物語が展開されます

 

独自の設定の物質やSFチックな設定などが混ぜ込まれ、パラレルワールドの19世紀の話となっています。

 

この手の作品は、これらの設定が現実から離れれば離れるほどチープさが増して、緊張感がなくなってしまうのが特徴ですが

 

この作品ではパラレルワールドならではの特徴を生かしつつ、話が破綻しないようにうまく設定が作りこまれています。

 

 三つの物語

 この作品は三つのパートで構成されています

 

  1. ジェリーフィッシュ
  2. 地上
  3. インタールード

 

1は文字どうり、ジェリーフィッシュの中で一体何が起こったのか?

2はマリアと漣のコンビがジェリーフィッシュ事件の謎を次第に明らかにしていき

3はある少年の話が物語途中に挿入されます

 

様々な物語が絡み合い終盤につながっていく様は読んでいて

 

なるほど、そうきたか!

 

と唸ること間違いなしです!

 

ぜひ手に取って読んでみてください!

 

 

 

※以下ネタバレ※

 

 

 

ここからは物語の核心に触れていきます

 

未読の方はブラウザバック推奨です

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

メイントリック

 

いやー、この発想はなかったです

市川優人さんの手のひらで踊らされてしまいました笑

 

今回のメイントリックは

 

ジェリーフィッシュは2機存在した

 

これに僕たち読者は騙されてしまいましたね……

 

クローズドサークルの根底を覆しかねないこの事実は、フェアかどうかと問われれば

実はかなりグレーなんじゃないかなと思っていて

冒頭の報告書では確かにエドワードが乗組員として書かれています

(この報告書の記述を地の文ととらえるかどうかがホントに難しい…)

 

しかし実際はサイモンと呼ばれる男が正規の報告書に書かれていた

 

そこで僕たちは「え?」となるわけです

 

視点の違い

 

p.299で明かされる人物誤認トリック

 

マリアと漣はサイモンを含めた六人が搭乗していると考えていて

 

僕たち読者はエドワードがジェリーフィッシュに乗っている物語を同時に見ているので

先入観が入ってしまっていました

 

叙述トリックの応用系で

 

読者が知っているけれど、作中人物はそれを知らない

 

という認識の違いがこの物語をより面白くしているのかなと思います

 

クライマックス

 最後の犯人とマリアが対峙するシーンでは、マリアが「あんたは誰?」と問いかけます

 

インタールードで明かされた犯人とレベッカの関係は二人だけが知っているもの

 

確かに犯人はレベッカとはただの知り合いだったのかもしれない

 

だがレベッカが設計書を渡したのは犯人であり、犯人もレベッカのことを慕っていた

 

しかし二人だけの関係をマリアは知り合い以上のものであることを理解ししていたのです

 

このことが犯人にとって予想外なものだったのでしょう

 

6人を抹殺するという犯行を成しえた彼は、レベッカの思いを胸にジェリーフィッシュでマリアの前から姿を消します

 

この読後感…

 

復讐を果たした犯人の切なさがにじみ出ていて、大好きです!

 

まとめ

この作品は伏線の量が多く、一度読み終えた後も再読することで新たな発見があり、何度も楽しめる作品でした!

 

マリアと漣のコンビはシリーズ化されているようですのでこのコンビのさらなる活躍をみてみたいですね!

 

今回は「ジェリーフィッシュは凍らない」 ー市川優人ーを紹介させていただきました!

 

それではみなさまよいミステリ小説ライフを!!