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理系大学院生がおすすめのミステリ小説を中心に紹介していく雑記ブログ

「向日葵の咲かない夏」 ー道尾秀介ー 【自殺した同級生が蜘蛛に転生】あらすじ&感想

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初めに紹介したい小説は道尾秀介さんの代表作、「向日葵の咲かない夏」です。

 

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第6回本格ミステリ大賞候補となったこの作品ですが、一般的には陰鬱な雰囲気からか評価が完全に分かれているのが特徴です。

 

なぜ評価が分かれているのか?道尾秀介の代表作と呼ばれているのはなぜなのか?

 

詳しく解説していこうと思います!ではではさっそくまいりましょう!

 

この本のオススメ度 A

 

 

概要

 

夏休みを迎える卒業式の日。先生に頼まれ、欠席した級友の家を訪れた。

きい、きい。

妙な音が聞こえる。S君は首を吊って死んでいた。

だが、その衝撃もつかの間、彼の死体は忽然と消えてしまう。

一週間後、S君はあるものに姿を変えて現れた。

「僕は殺されたんだ」と訴えながら。

僕は妹のミカと、彼の無念を晴らすため、事件を追いはじめた。

あなたの目の前に広がる、もう一つの夏休み。

                           (新潮文庫)

 

なんとも引き込まれる概要ですね…

この文章だけを見ると主人公の「僕」がS君の死因の真相を解明するという大まかな

ストーリーが想像できます。

しかし、そこを斜め上、いや真上に飛び越えてくるのがこの作品の、もとい道尾秀介先生の真骨頂なのです!

 

あらすじ

 

主人公は小学四年生のミチオ

物語は大人になったミチオが事件のちょうど一年後、四歳の誕生日を迎えた妹のミカが目の前で息を引き取ったという独白から始まります。

考えようによっては、妹は幸せだったのかもしれない。こんな世界を何十年も生き抜いていくよりは。僕は、ときおり思う。

僕も、生まれてこなければよかったと。

                    (「向日葵の咲かない夏」p.6)

そして事件の回想へ…

 

 

夏休み前の最後のホームルーム、窓の外を眺めていたミチオはクラスの級友S君が空中に浮かんでいる姿を目撃します。

 

何かの見間違いかと不思議に思ったミチオ。

ちょうどホームルームにS君が欠席していため、夏休みのプリントと宿題をS君の家に届けることになりました。

S君の家の前つき、S君を呼びますが返事は帰ってきません、おそるおそる中に入ると、

 

なんとそこには首をつっているS君の姿がありました。

 

驚愕するミチオ、S君は首を吊った状態でミチオを見下ろしています。動揺しながら家を飛び出したミチオは庭にたくさんの向日葵が咲いていることに気づきます。

そしてミチオは思うのです。S君は僕を見下ろしていたのではなく、強く咲く向日葵を見ていたのかもしれない、と。

ミチオの頬には涙が伝っていました。

 

学校に駆け込んだミチオは担任の岩村先生に家でS君が首をつっていたことを伝えます。

大変なことになった…と青ざめる岩村先生。ミチオは家に待機するように言われ、岩村先生は警察と一緒にS君の家へと向かいました。

 

ミチオは家に帰り、妹のミカにも先ほど自分が見た光景について話します。

時間がたち、ミチオのもとへ岩村先生がやってきますが、岩村先生の口からは予想外な言葉が発せられます。

 

S君の死体が消えてしまった

 

そんなはずはない、確かにこの目でS君の死体を見たとミチオは主張します。

しかし事実として死体は消えており、首を吊ったであろうロープや 倒れたいすなどもありませんでした。

 

唯一、現場にはS君の排泄物と思われるものをふき取った後だけが残っていました。

 

岩村先生と話を終えて、部屋にもどったミチオは今聞いた内容をミカに伝えます。

するとミカはミチオに近くに住んでいるトコお婆さんに相談しに行こうと提案します。

 

トコお婆さんに助言をもらい、家に戻ったミカとミチオ。そこで二人はS君と似た声が子供部屋から発せられていることに気づきます。

 

ミチオが部屋を開けるとそこには

 

 

蜘蛛となったS君がいたのです

 

 

困惑するミチオとミカ。

 

ミチオはごくりと唾をのみ、声を震わせながらS君に問いかけます。

 

 

「S君は、自殺したんだよね?」

S君は、ふん、と瓶の中から僕を見上げた。

「自殺なんてするもんか。僕は殺されたんだ」

「誰に……」

「先生にだよ」

S君は吐き出すように答えた。

「僕は、岩村先生に殺されたんだ」

                       (「向日葵の咲かない夏」p.110)

 

 

 

感想

 いかがでしょうか?物語の序盤で完全に心をつかまれてしまいますよね。

さすが道尾秀介です。

 

今回のあらすじは大まかな流れを説明しましたが、この作品はここまでの展開で圧倒的な量の伏線がちりばめられています。

 

冒頭にも書きましたがこの作品は

  • 陰鬱な雰囲気
  • 蜘蛛がしゃべるという不気味な内容

そして道尾秀介先生の描写力も相まってじめじめと物語が進みます。

 

結果として評価が分かれてしまい、この作品が好みに合わない人が多くなっているのだと推測できます。

 

しかしこの作品の醍醐味は

  • ラストスパートにおける大どんでん返し
  • 伏線回収のオンパレード
  • 絶妙な読後感

だと思いますので、作品の序盤の雰囲気があわないなと思う人でも、この作品を一度読み終えれば、虜になること間違いなしです!

 

なのであまりミステリ小説を読んだことがないような人にも

自信をもってお勧めできます。

 

余談ですが、中高生のころあまり本を読んでなかった僕は、この作品を読んでから

本格的にミステリ小説の世界に引き込まれていきました。

 

 

そして読む人を選ぶような陰鬱な雰囲気のこの小説こそが、道尾秀介の代表作だと挙げる人は多いです。

 

なぜならこの「向日葵の咲かない夏」という作品は読者に気づかれることなく伏線を張り巡らせ、読者を掌で踊らせるような、道尾秀介という作家の特異性が最もよく現れている作品だからなのではないかと、僕は思います。

 

 

 

 

今回は「向日葵の咲かない夏」ー道尾秀介ーを紹介させていただきました!

 

それではみなさま、よいミステリ小説ライフを!